2026-08-21
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「怒られるから出す声」を、私は増やしたくない
「声を出せ!」——。少年スポーツの現場で、最もよく聞かれる指導の言葉ではないでしょうか。ただ、私自身はこうした精神論的な理由だけでは不十分だと思っています。声には、もっと戦略的な意味があります。
「出してます!」という選手と、「声を出せ」と言い続ける指導者
野球、ソフトボール、サッカー、バスケ。競技は違っても、どこでも同じように聞こえてきます。
ただ、選手からすると「出してます!」という気持ちもあるはずです。声を張り上げているつもりなのに、また「声を出せ」と言われる。そんな経験はありませんか。
なぜ、そこまで「声」にこだわるのか。私がソフトボールを教えてきた経験をもとに、試合中に声を出した方がいい理由を掘り下げていきます。
元気、リズム、強そうに見せる。それだけでは足りない
まず、多くの指導者が言う「声を出す理由」を整理してみましょう。
- 元気を出すため
- チームのリズムを作るため
- 強そうに見せるため
たしかに、これらは一定の効果があります。声を出すことで気持ちが切り替わったり、チーム全体の雰囲気が盛り上がったりすることは間違いありません。
それでも、これだけでは足りないと感じています。
自分たちの指示を通し、相手の指示をかき消す
声の戦略的な意味とは、自分たちの指示を通りやすくし、相手の指示をかき消すことです。
試合の現場では、一瞬で判断を迫られる場面が連続します。そこで重要なのが「どの声が届くか」。たとえば、
- 内野から外野への守備位置の指示
- ベンチからのランナーへの走塁指示
- 守備時に次に投げるところの指示
こうした声が、相手チームのざわめきにかき消されてしまったらどうでしょう。逆に、自分たちの声が相手の指示を邪魔できれば、それだけで一つのプレーが変わり、勝敗に直結します。
つまり声とは、ただの気合いや応援ではなく、勝つための武器なのです。
勝敗を分けるのは、相手より少しだけ有利かどうか
スポーツの勝敗は「絶対的な強さ」だけで決まるわけではありません。むしろ大事なのは、相手より相対的に有利に立つことです。
- 相手より少し速く走れる
- 相手より少し正確に守れる
- 相手より声が通る
この「ほんの少しの差」が、最終的には大きな勝敗の差になります。
これはスポーツに限らず、ビジネスでも同じことが言えます。競合他社よりも一歩有利に立つことで、結果が変わる。声は、そのためのシンプルで強力な手段なのです。
大きい声ではなく、届く声
ここで、選手に問いかけたいことがあります。
「声を出してます!」と胸を張って言えるかもしれません。しかし、重要なのはそこではなく、相手よりも大きく、相手よりも届いているかなのです。
ただ大きな声を出すのではなく、必要なタイミングで必要な相手に届く声を出す。それができてこそ、チームを勝利に導く「声」になります。
「さあこい!」を強要することに、どれほど意味があるのか
では、指導者の側にはどんな課題があるでしょうか。
「さあこい!」「いけー!」といった掛け声を強要することに、どれほどの意味があるでしょうか。確かに雰囲気は盛り上がりますが、それが直接勝敗に結びつくかと言えば疑問が残ります。
指導者が本当にすべきことは、
- 声を「情報伝達の武器」として教えること
- 選手に「なぜ声を出すのか」を理解させること
この二つだと思っています。
意味が分かれば、選手は自分から声を出す
声を義務にしてしまうと、子どもたちは「また怒られるから声を出さなきゃ」という気持ちになり、プレーを楽しめなくなります。
むしろ「声を出すことが勝利につながる」と理解すれば、選手は自然と声を出すようになるのです。
指導の現場で忘れてはならないのは、スポーツの楽しさです。声を出すことが「強制的な義務」になってしまえば、子どもたちは試合を窮屈に感じます。一方で、「声は相手に勝つための戦略であり、自分たちの武器だ」と理解できれば、声を出すことそのものが楽しくなります。
スポーツは勝つためにやるものですが、同時に楽しむためのものでもあります。声を戦略的に使うことで、両方を両立できるのです。
声は、掛け声ではなく武器
試合中に声を出すことには、明確な意味があります。それは、相手より有利に立つための戦術です。
選手にとっては「相手より届く声」を意識すること。指導者にとっては「声を強制するのではなく、戦略として教えること」。
この2つを大切にするだけで、チームの雰囲気も、試合の内容も変わっていきます。
次の試合、グラウンドで聞こえてくる声は、誰が誰のために出している声でしょうか。

