2026-10-20
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「ちゃんと」は、私の頭の中にしかなかった
「ちゃんとやれ」と、何度も言っていた。
子どもの動きは変わらなかった。変わったのは顔つきだけだ。
怒られないように、間違えないプレーを探すようになった。
口から出るのは、いつも同じ3つだった
「ちゃんとやれ」
「しっかりしろ」
「集中しろ」
指導がうまくいかない日、私の口から出るのは、いつもこの3つだった。
しかも、言っている自分にも、何をどう直してほしいのかがはっきりしていなかった。
伝わらないと、声を大きくする。回数を増やす。
それでも変わらないと、最後は「やる気がない」で片づける。私は長く、そうしていた。
「ちゃんと」は、私の頭の中にしかなかった
子どもの側からすれば、
何をすれば「ちゃんと」になるのかが見えていない。
見えないまま叱られ続けても、直しようがない。
だから、同じ動きを繰り返すしかない。
「周りをよく見ろ」も同じだ。方向は正しい。
だが、いつ、何を見ればいいのかがわからない。
「ちゃんと」の中身は、言う側の頭の中にしかない。
私が言っていた「ちゃんと」は、私の頭の中にしかない正解のことだった。
「ちゃんと」を、1つの動きに置き換える
本には、「ちゃんと」を、その場の1つの動きに置き換えることを書いた。
「打球が来る前に、ランナーがどこにいるか1回見よう」
「捕ったら、投げる前に相手が準備できているかを見よう」
言う前に、自分に聞く。
いまの「ちゃんと」は、どの動きのことか。答えが出ないなら、まだ言わない。
「わかった?」と聞かない
言ったあとは、「わかった?」と聞かない。こう確かめる。
「最初に何をする?」
「はい」より、本人の言葉で返ってきた1つのほうが、次のプレーに残る。
1つ変えて、何が起きたかを見る
この話は、『となりで支える声かけ30』の場面2に入れた。
30の場面は、どれも指導の現場でよく起きることで、1つの場面は1分ほどで読める。
どの場面も、同じ道筋をたどる。
場面が始まり、そこでつい口から出てしまう言葉が出てくる。
なぜそれが届かないのかを考えたあとに、次の練習でそのまま使える言葉を置いた。
最後に「そのときの私」がある。
私の現場で実際に起きたことだ。
うまくいかなかった話のほうが多い。私にとっては、ここが本体だ。
本の最初には、こう書いた。
読んだら、1つだけ決めてほしい。
次の練習で、誰に、何と言うか。
全部を1度に変えなくていい。
1つ変えて、何が起きたかを見る。それで十分だ。
相手が子どもでなくても
これは、ジュニアスポーツの指導の本だ。
ただ、「ちゃんと」の中身が言う側の頭の中にしかないことは、
相手が子どもでなくても、人に何かを伝える立場にいれば起きることなのかもしれない。
いま口にしている「ちゃんと」は、どの動きのことだろう。
『となりで支える声かけ30〜怒鳴らずに伝わる、ジュニアスポーツ指導の場面別ハンドブック〜』(土居総二郎/Kindle版・500円)
Kindle Unlimitedの会員は、追加料金なしで読めます。

