2026-09-07
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部下は聞かなかったんじゃない、私が聞かれない上司だった
「またミスか…」そんな会議で、心のどこかがズシンと重くなった経験、ありませんか。私も正直なところ、何度も味わってきました。「叱ったほうがいいのかな」と悩みながら会議に臨んでいた頃の私は、結果的に場を険悪にしてしまったこともあります。今思えば、それは部下のためにも、自分のためにもなっていなかったんですよね。
叱った直後に残る、静けさ
会議で部下を叱ったとき、その場では「言ってやったぞ」と少しだけスッキリするかもしれません。
でも、不思議とそのあと部下は何も言わなくなり、場は静まり返ってしまいます。
心理学的にも「怒られた内容」より「怒られた事実」そのものが強く残る、と言われています。つまり、学びが深まるどころか、心を閉ざしてしまうのです。
そう考えると、再発防止会議で一番最初に必要なのは「叱ること」ではなく「受け止めること」なんですよね。
正論を言うほど、現場は遠ざかる
「PDCAが回っていないからだ」
「なぜなぜ分析をもっと徹底すべきだ」
私自身、ついこういう言葉を口にしたことがあります。でも、その瞬間に会議室の空気が冷え込むのを、何度も体感しました。
頭では正しいことを言っているつもりでも、現場の人からすると「わかってるけど、現実的に難しいんだよ」という気持ちになってしまうんです。
だからこそ、大事なのは理論より痛みの共有。同じ温度で語る姿勢のほうが、ずっと信頼につながります。
「なぜ?」を「どうすれば?」に置き換える
再発防止会議でつい繰り返してしまう言葉が、「なぜ?」です。
「なぜ確認しなかった?」
「なぜ防げなかった?」
「なぜ同じことが起きるんだ?」
問いかけている本人は「原因を突き止めている」つもりでも、受け取る側はまるで取り調べを受けているように感じ、心を閉ざしてしまうことが多いのです。
トヨタ式の「なぜなぜ分析」も本来は大切なツールですが、使い方を誤ると「人を追い詰める道具」に変わってしまうんですよね。問いの先にあるべきは責任の所在ではなく、次にどう活かすか。そこを見失わないことが、上司としての大事な役割だと感じています。
今日からできる工夫
- 「なぜ?」を3回以上続けない。「取り調べモード」に入る前に切り替えるサインにする
- 「なぜ?」ではなく「どうすれば?」に置き換える。部下の思考が「責められている」から「改善を考える」へスイッチする
- 自分の経験を一言添える。「私も昔やらかしたことあるんだよ」と言うだけで、相手は安心して答えやすくなる
会話イメージ
部下「確認を怠ってしまいました…」
上司「そうか。じゃあ次はどうすれば安心できるかな?」
部下「ダブルチェックの仕組みを作れば防げると思います」
上司「いいね。それなら他の人も助かるね」
「なぜ?」は便利な問いですが、使いすぎると暴力的な問いになってしまいます。その代わりに「どうすれば?」を使うことで、会議は犯人探しから前向きな改善の場に変わります。
部下は聞かなかったのではなく、聞けなかった
再発防止会議で、よく聞こえてくる言葉があります。
「わからなければ聞けばよかったのに」
「なぜ確認しなかったんだ?」
一見もっともらしい問いですが、実はこれこそが上司の落とし穴。部下は聞かなかったのではなく、聞けなかったのです。
その背景には、こんな空気があります。
- 上司がいつも忙しそう
- 「そんなことも知らないのか」と言われそうで怖い
- 過去に質問したとき冷たく返された経験がある
つまり「なぜ聞かなかった?」は、実は「なぜ自分は聞かれる存在になれなかったのか?」という問いに置き換えるべきなのです。
今日からできる工夫
- 「質問していいよ」を口に出す。会議冒頭や雑談で「遠慮なく聞いてね」と言葉にする
- あえて自分が「わからない」を見せる。「これ、私もよく忘れるんだよ」と笑えば、質問が自然に生まれる
- 質問されたら歓迎で返す。「聞いてくれて助かるよ」「いい確認だね」と肯定から入る
会話イメージ
部下「すみません、基本的なことかもしれませんが…」
上司「大歓迎だよ。聞いてくれてありがとう。みんなの役にも立つ質問だね」
部下「あ、そうなんですね。じゃあ次はこういう対応にします」
上司「いいね、その方が安心だね」
「なぜ聞かないんだ?」は、責任を部下に押し付ける問い。一方で「どうすれば質問しやすい雰囲気になるかな?」と考えれば、上司の行動は自然と変わります。質問を封じる空気を壊すのは、仕組みではなく上司の日常の一言なんですよね。
「前に言っただろ?」が、報告を消していく
職場でよく耳にするフレーズがあります。
「前に言っただろ?」
これ、言っている側は何気ないつもりでも、部下にとっては強烈な壁になります。
「次に聞いたらまた怒られるかも」
「確認するのは恥ずかしいことなのかも」
そんな気持ちが芽生え、やがて質問や報告そのものが消えてしまうのです。
実は、「言ったかどうか」ではなく「伝わったかどうか」を確認するのが上司の役割。何度でも聞ける職場はむしろ健全で、ミスを未然に防げる環境なのです。
今日からできる工夫
- 「前に言ったよね」を封印する。代わりに「もう一度説明しておくね」と切り替える
- 伝わったかを確認する質問をする。「ここまでで不安なところある?」と聞いてみる
- 繰り返し聞かれたらポジティブに受け止める。「確認してくれて助かるよ」と返せば、空気は一気に柔らかくなる
会話イメージ
部下「すみません、また同じことを聞いてしまって…」
上司「いいよいいよ。むしろ確認してくれて助かるよ」
部下「ありがとうございます。これで安心して進められます」
上司「そう言ってもらえると嬉しいな。じゃあ一緒に進めよう」
壁をなくすマネジメントとは、何度でも聞ける空気を守ることなのだと思います。
くだらないことで笑える余裕が、最大の安全装置になる
会議でのフレームワークやルール徹底も大事ですが、それ以上に効果があるのが日常の空気です。意外かもしれませんが、ちょっとした笑い合いこそが最高の再発防止策になるんです。
たとえば、こんなやりとり。
部下「課長、靴下左右違いますよ」
上司「バレたか。朝、息子の準備とバタバタしててね」
こんなやりとりがある職場は、自然と安心感が広がります。ミスを隠さない、困ったらすぐ相談できる、フォローし合える。そんな人間同士のセーフティネットが機能し始めるのです。
今日からできる工夫
- どうでもいい雑談を歓迎する。天気の話でも昨日の晩ご飯でもいい。笑顔のきっかけになる
- 自分の小さな失敗をネタにする。「今日、書類忘れちゃったよ」など、上司が完璧じゃない姿を見せる
- 笑いが起きたら話を広げる。「それ、他のみんなもよくあるよね」と共感を添える
会話イメージ
部下「課長、ネクタイ曲がってますよ」
上司「あ、本当?やばいな、今日ずっとこの格好で打合せしてたかも」
部下「大丈夫ですよ、逆に親しみやすいです」
上司「ありがとう、そう言ってくれると救われるわ」
職場に必要なのは、完璧なルールや厳しい監視ではありません。くだらないことで笑える余裕こそが、最大の安全装置になります。笑いは緊張をほどき、安心を広げ、結果としてミスの再発防止につながる。マネージャーが仕込むべき最強の仕組みは、実は「一日一笑」なのかもしれません。
怒る代わりに笑い、責める代わりに寄り添う
上司に求められているのは、声を荒げることでも、説教することでもありません。むしろ大切なのは、人の心に風を通すような存在であることです。
ユーモアは軽さではなく、余裕の証。叱らずに笑い、責めずに受け止め、でも必要なところはきちんと立て直す。この品位のある柔らかさこそ、経験を重ねた上司だからこそ出せるマネジメント力なのだと感じています。
今日からできる工夫
- 怒る代わりに笑いで返す。「またやっちゃったか。じゃあ次はどうしようか」と和らげる
- 責める代わりに寄り添う。「大変だったね。じゃあ一緒に解決策を考えよう」と共に前を見る
- 厳しさと柔らかさの両立を意識する。ユーモアで場を和ませつつ、必要な手直しは淡々と進める
会話イメージ
部下「すみません、また資料の数字を間違えてしまいました」
上司「そうか。じゃあ今回は間違い探しゲームだね。どこ直す?」
部下「えっと…ここです。すぐ修正します」
上司「いいね。次からはこのチェックリストを一緒に使ってみよう」
「最近、課長ちょっと柔らかくなったよね」。こんな一言が出てくる職場は、もう変化が始まっている証拠です。文化を変えるのに大げさな言葉は必要ありません。日常の中で笑いと安心を仕込み続けることで、組織は静かに、でも確実に良くなっていきます。
最後に、私からのささやかな提案です。次に会議があるとき、ほんの一度でいいので「なぜ?」を「どうすれば?」に言い換えてみる。その瞬間から、会議の流れも、部下の表情も、少し変わっていくかもしれません。
叱らず、笑い、寄り添う。その姿勢が、職場の空気を少しずつ変えていくのだと思っています。

