2026-10-23

言わないと改善しない。でも、言うと空気が悪くなる。僕もかつては、この「フィードバック地獄」にハマっていました。できていないことを見つけては「なぜ?」「次は?」と詰め寄る日々。毎日、胃が痛くなる思いをしていました。

 

「部下にフィードバックをするのが、正直しんどい」
そう感じたことはありませんか?

 

少し厳しく言えば「パワハラ」と言われそうで怖いし、かといって優しく言えば伝わらない。板挟みですよね。その気持ち、痛いほどよくわかります。

 

良かれと思ってやっているのに、部下は心を閉ざし、チームの空気はどんより重くなる。「なんで伝わらないんだろう」と、ずっと思っていました。

 

でも、ある時気づいたんです。僕のフィードバックが届かない理由は、「伝える内容」ではなく「その前の準備」にあったんだ、と。

 

その答えは、会社の会議室ではなく、休日に指導しているジュニアスポーツ(ソフトボール)のグラウンドに落ちていました。

 

指摘が届く条件は「9:1」

 

結論から言うと、人が耳を開く比率は「承認9:指摘1」です。

 

「え、9回も褒めるの? そんな甘やかしていいの?」
そう思いますよね。僕もそう思っていました。

 

でも、これは「甘やかす」のとはちょっと違います。「通行手形」を手に入れる、という感覚に近いかもしれません。

 

子供たちを指導していると、これが本当に顕著なんです。バットの振り方が違う子に、いきなり「そこ違うぞ!」と指摘しても、ほとんどの子は聞きません。「怒られた」というショックで耳を塞いでしまうか、「うるさいな」と反発するか。

 

でも、上手なコーチはこうします。

 

  • 「お、今日は一番に来て準備してたな」
  • 「今のキャッチボール、いい回転だったよ」
  • 「その構え方、強そうですごく良いね」

 

こうやって、練習の中で「あなたのことを見てるよ」「認めているよ」というサインを出し続ける。

 

そうすると、子供の中に「コーチは僕の味方だ」という「安心感の土台(9)」ができます。この土台ができた時、初めて「通行手形」が発行されます。

 

その状態で、「今のスイング、あと少し肘を畳んだらもっと飛ぶよ(1)」と伝えると……「はい!やってみます!」と、驚くほど素直に言葉が届くんです。

 

甘やかしているわけじゃありません。厳しい指摘(1)を届けるために、その9倍の承認(9)で「聞く耳」を作っているんです。

 

職場の「承認」は、挨拶でいい

 

これ、職場でも全く同じ構造ですよね。フィードバックがうまくいかない時って、だいたい「普段の9」がない状態で、いきなり会議室で「1」を投げつけている時なんです。

 

残高ゼロの銀行口座から、お金を引き出そうとしているようなもの。それでは、関係が破綻して当たり前です。

 

「でも、仕事でそんなに褒めることなんてないよ」
そう思うかもしれません。でも、大げさに「すごい!」と褒める必要はないんです。

 

  • 朝、目を見て「おはよう」と言う。
  • 「資料、期限通りで助かったよ」と伝える。
  • 「〇〇さん」と名前で呼ぶ。

 

ただ「あなたの存在を認識しているよ」「見てるよ」というサインだけで十分。それが、職場における「9」になります。

 

この「9」の積み重ねが、部下の心にクッションを作ります。このクッションがあれば、いざ厳しいフィードバック(1)を受けた時も、「自分のために言ってくれているんだ」と受け止めることができる。

 

まずは「おはよう」から

 

フィードバックの極意は、会議室の中ではなく、「何げない日常の関わり」にありました。

 

もし今、部下への接し方に悩んでいるなら、フィードバックの技術を磨く前に、まずは「口座の残高」を貯めることから始めてみませんか?

 

明日の朝、部下に会ったら、いきなり仕事の話をする前に、「おはよう」の後に何か一つ、「9」の要素を足してみる。「今日は早いね」「顔色いいね」なんでもいいです。

 

その小さな一言が、いつか厳しい局面でチームを救う「最強の信頼関係」に変わっていくかもしれません。