2026-10-26

「部下がなかなか育たない」「教えても教えても、指示待ちのままだ」。実は、「育てよう」と思えば思うほど、人は育たなくなるというパラドックスがあります。スポーツの現場でも、それは同じです。

 

教え魔のチームほど、試合になると弱い

 

「教え魔」と呼ばれるような、手取り足取りすべてを指導するコーチ。そういう人のチームほど、いざ試合になると弱い。

 

ベンチからの指示がないと動けない、「ロボット」のような選手ばかりになってしまうからです。

 

「教える」と「育む」は別物である

 

多くの管理職の方が陥りがちなのが、「育成=正解を教え込むこと」という勘違いです。業務の手順、過去の成功事例、トラブルの対処法。もちろん、これらを教えることは必要です。

 

でも、それはあくまで「インストール」であって、「育成」ではありません。育成とは、知識を詰め込むことではなく、「自ら考える回路」を作ることです。

 

僕が指導するソフトボールのチームでも、エラーをした選手に「なんであんな捕り方をしたんだ!」と正解を押し付けることはしません。代わりに、こう問いかけます。

 

  • 今の打球、どう見えていた?
  • 次はどう準備すれば止められると思う?

 

正解を与えるのではなく、問いを与える。その繰り返しだけが、脳内に「思考の回路」を作っていくんです。

 

名コーチは「水」はやるが、無理やり「花」を咲かせたりしない

 

育成上手な指導者は、庭師(ガーデナー)に似ています。種が芽を出し、花を咲かせるために必要なもの。「太陽(機会)」を当て、「水(リソース)」をやり、「土(安心感)」を整える。これらを用意するのは、リーダーの責任です。

 

でも、「いつ咲くか」「どんな色で咲くか」までは、コントロールできません。ここをコントロールしようとするから、上司も部下も苦しくなるんです。

 

「なんでまだ咲かないんだ!」「俺の思った通りの色じゃない!」とイライラしてしまう。植物を無理やり引っ張っても、早く育つどころか枯れてしまいますよね。人も同じです。

 

環境さえ整えれば、あとはその人のタイミングで、その人らしい花を咲かせる。それを信じられるかどうかが、リーダーの器の見せ所です。

 

一番難しいのは、「待つ」こと

 

では、育成型マネジメントで一番難しいことは何か。それは、「待つ」ことです。

 

部下が失敗しそうになっている時、あるいは遠回りをしている時。経験のある上司なら、先回りして「そっちじゃない、こっちだ」と言いたくなります。

 

それは「親切心」に見えて、実は「自分の不安を解消したい」というエゴかもしれません。

 

そこをグッとこらえて、見守る。失敗という「経験学習」の機会を奪わない。もちろん、致命傷になりそうな時は止めなければいけません。でも、かすり傷で済みそうなら、あえて転ばせてみる。

 

そして、立ち上がる時に手を差し伸べるのではなく、「どうやって立ち上がるか」を観察する。この「観察する胆力」こそが、部下を劇的に伸ばします。

 

「君はどうしたい?」の一言が、根っこを太くする

 

明日からできる簡単なアクションプランを一つ。部下に「どうすればいいですか?」と聞かれた時、即答するのをやめてみてください。代わりに、こう返してみるんです。

 

「君はどうしたい?」

 

最初は「えっ…」と戸惑われるかもしれません。でも、この問いかけを続けることで、彼らは少しずつ「自分の頭」で考え始めます。

 

答えを教えるのは楽ですが、それでは根っこは深くなりません。問いを投げかけ、考えさせ、待つ。指示待ちの集団が、自律して動く「強いチーム」に変わっていくとしたら、その入口はきっとここです。

 

今日あなたが即答したあの質問は、本当にあなたが答えるべきものだったでしょうか。