2024-04-27

#003

「ひとつ勝つと、どんどん勝つようになるよ」

 

今週末から中学生の春季大会が始まります。
自信、期待、不安、緊張、決意、いろんな気持ちが子どもたちの胸中にあることでしょう。
それは監督・コーチも同じ。

 

そんな時にふと思い出すのが冒頭の「ひとつ勝つと、どんどん勝つようになるよ」というフレーズ。
私が小学生チームを率いてる時に、利他の心を背中で教えてくれた、大恩人の故猪股さんの言葉です。
(故人であることと、学んだことの大きさ、故人の偉大さを伝えるために実名で記します)

 

自分の父親世代の猪股さんから学んだことは多いし、大きいし、思い出すとあの時は理解していたつもりでも、
今の自分が振り返るともっと含蓄のある言葉だったんだとしみじみ噛み締めたりします。
猪股さんとのエピソードはまた別の場で語りたいと思います。

 

さて、本題に戻ります。
「ひとつ勝つと、どんどん勝つようになるよ」というフレーズの勝つとは「優勝」のこと。
ある年、歴代最強と思ってた黄金世代が6年生になってもなかなか大会で優勝できない状況が続きました。
正真正銘のシルバーコレクター。

 

そんな私に猪股さんが「焦るな」「何かひとつキッカケがあると事態は急に好転する」と教えてくれたのです。
とにかく強くなりたくて、土日になるたび色んな地域に武者修行に出ていた頃でした。
久しぶりの合同練習の時に「たまにはじっくり練習するのも大事だよ」と言われました。

 

指揮官の焦りは、チームに伝染する。

 

仕事の場に置き換えたとしたら、大小問わず組織の長が、名を上げたくて功を焦っている状態。
当然マネジメントにもその焦りが現れ、猛進・鼓舞・詰問・対決の空気。
そんなリーダーに対してメンバーが持つ感情は、恐れ・怯え・怒り・嫌気・忌避・緊張なのではないでしょうか。
普通に考えたら、こんな状態で常勝軍団になれるわけがありません。
一時のテンションは上げられても、中長期のモチベーションは上がりませんからね。

 

これが、当時の私には分かっていませんでした。
だから勝てなかった、昇進も遅れた。

 

やればやるだけ上手になるし、強くなるんだ。
俺だってみんなと同じように勝ちたいし、負けたら悔しいんだ、だから頑張ろう!
笑っちゃいますよね。

 

ミスで負けたら「悔しいよな。日頃の練習から気をつけよう」とかチーム全体に言いながら、自分の気持ちを抑えるのに必死。
ミスをしたら次にミスをしないよう、徹底管理。
いわゆるオーバーコンプライアンス。

 

本当にやるべきは、一番悔しい思いをしているミスした子と会話すること。
もしかしたら「こんな思いをするくらいなら辞めたい」と思ってるかもしれない。
辞めるか続けるかの小さな分岐点に立っているその子に対して、自分にできることは何か。
せっかく自分と関わったのだから、その縁が良かったと思ってもらえるためにできることは何か。
指導者が全力を尽くすのは、幼く壊れやすい、でもとても綺麗な子どもの心に対してだと私は思います。

 

またまた横道にそれてしまいました。
で、その黄金世代は最後の大会でやっと優勝できました。
その時の表彰式が終わった後に、猪股さんがウチのチームの子達に向かって「お前たち、本当におめでとう!」と最高の笑顔で祝ってくれたのです。
挙げ句の果てに、まるで優勝監督みたいに自分とウチのチームの子達と記念撮影したりして(笑)
当時は大笑いして、もう猪股さんらしいね!とみんなでちゃかしてましたが、本当はそうじゃない。
今の私にはわかりますよ、猪股さん。
自分のことのように本当に嬉しかったんですよね。

 

「ひとつ勝つと、どんどん勝つようになるよ」

 

実力的には黄金世代に劣ると見られていた次の学年世代。

6年生は2人だけ、しかもほぼ半分女子。
なのに、翌年の大会をほぼ総ナメ。グランドスラムにあと一歩という快進撃。
こっちが最強だったか!

 

兄さんたちがしこたましごかれてたのを横で見て、いいとこ取りした「ちゃっかり世代」
長男より次男の方が要領がいい、あるあるですね。

ひとつ優勝して肩の荷が降りた&過剰な期待はしていなかった私も力感が抜けていい具合だったのでしょうか。

 

そんなことを思い出しながら、今の中3生たちのラストシーズンに臨みます。
「黄金」より「ちゃっかり」の方が強いんだよ・・・とニヤニヤしながら。